透析治療について

第2章 透析と日常生活
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血液透析とは

体外で人工透析(ダイアライザー)を使って血液中にたまった老廃物を取り除き、水や電解質のバランスを整え、きれいになった血液をふたたび体に戻すことをいいます。透析に要する時間は、1回4~5時間、週3回が基本となります。

血液透析のイメージ
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内シャントって?

体血液透析を行うには、比較的たくさんの血液(1分あたり250~300ml)をダイアライザーに送らなければなりません。そのため、血液量の多い太い血管が必要となります。そこで、手術によって動脈と静脈をつなぎ合わせた“内シャント”と呼ばれるものを作ります。

シャント手術のイメージ
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内シャントで注意すること

毎朝、血液の流れる音を確認しましょう

  • 1.聴診器をシャント部分に当ててみる
  • 2.耳をシャント部分に当ててみる
  • 3.手をシャント部分に当ててみる
  • 1~3のいずれかかで、ザーザーと音がすればシャントは流れています。

毎朝、シャント部分を見てください

  • 1.皮膚が赤くなっていないか?
  • 2.腫れていないか?
  • 3.熱っぽくないか?
  • 4.痛みは無いか?
  • 5.出血していないか?
  • ・シャント部分は清潔にして、感染を起こさないようにしましょう。

  • ・透析をした日の入浴は避けましょう。穿刺部位を濡らしてしまうと、感染症の原因になります。

  • ・シャントを作った腕に重いものをぶら下げたり、腕時計をしないようにしましょう。

  • ・シャントを作った腕では血液測定をしないこと。

血液の流れる音を確認しましょう 内シャントで注意すること
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止血方法を覚えましょう

  • 1.穿刺部を5~10分指で押さえます。
  • 2.圧迫の強さは、強すぎるとシャントをつぶすことになり、弱いと出血させてしまうので、適度な強さで圧迫します。
  • 3.確実に止血できていることを確認します。
  • 4.インジェクションパット等は翌日にはがしてください。
止血方法のイメージ
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ドライウェイト(目標体重)を決めます

ドライウェイトとは

からだに余分な水分が無い状態で、透析後に達成しなくてはならない目標体重のことです。
ドライウェイトとは次のような状態の時の体重を言います。

  • 1.顔や手足にむくみが無い
  • 2.心臓が大きくない
  • 3.血圧がほぼ正常である
  • 4.体調が良いと感じられる

透析終了後には、このドライウェイトの状態になっていることが望ましいです。

ドライウェイトは、血圧や毎月の心胸比、心エコー所見をもとに決定します。透析後の全身状態も参考にしますが、食欲や体調によって太ったり痩せたりすることもあり、ドライウェイトも定期的な見直しが必要です。

ドライウェイトのイメージ

心胸比とは

胸郭の幅に対して心臓の幅がどれくらいを占めているかをパーセントで表したものです。

A/B×100=心胸比

心胸比が基準以上の場合、余分な水分がたまっていると考えられます。
心胸比の基準値(個人差があります。)

心胸比のについて
男性:50%以下 女性55%以下
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大切な水分管理

腎機能が低下すると、尿量が減り、体内の水分量はそのまま体重の増減になります。

体に入る水

代謝水 飲み水・食物中の水分

体から出る水

体から出る水のイメージ
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1日の飲み水はどれくらい?

前項でも触れたように、体に入る水の量と、出る水の量の差が透析間の体重増加となります。おしっこが出る人も出ない人も、体重増加を見ながら飲み水の量を調整します。
※飲み水は、お茶、水、ジュース、牛乳、コーヒー、酒類などで、うがいも含みます。
※病院用湯飲みコップは、約100mlあります。
※氷1個・・・20~30ml  うがい1回・・・約10ml

1日の体重増加は、1kgを目安としましょう

水分の多い食事

水分の多い食事:シチュー、白菜、牛乳、トマト、豆腐、くだもの
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塩分には要注意

塩分と水分は切っても切れない関係があります。塩分をとりすぎると、のどが渇いて水分がほしくなります。ですから、塩分の制限が水分の制限にもつながります。また、老廃物(尿毒症性物質) や血糖値の上昇によってものどが渇きます。

のどが渇くと水分をとり、結果水がたまるため塩分には要注意
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カリウムを減らす工夫を

カリウム(K)がある程度以上、血液の中にたまると、高カリウム血症となって心臓を止めてしまう危険性があります。

カリウムを多く含む食品

カリウムを多く含む食品:納豆、乳製品、さつまいも・じゃがいも、トマト、バナナ、柿、ほうれん草、コーヒー

カリウムを減らす工夫

カリウムを減らす工夫:野菜やいも類はゆでましょう。生野菜は水にさらしましょう。
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タンパク質は適量を

タンパク質の取りすぎは、尿素窒素(BUN)やリン(P)カリウム(K)の上昇につながります。逆に不足すると栄養状態が悪くなり抵抗力が弱くなります。自分の体格に合った適量のタンパク質をとることが大切です。

タンパク質の取りすぎに注意
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便秘になるのはなぜ?

透析患者さんは、食事や水分摂取量を制限されているため、便秘になりやすい傾向にあります。また服用している薬剤の種類によっても便秘を引き起こすことがあります。

便秘の主な原因

食物繊維の不足

便通を促す食物繊維を多く含む食品には、カリウムも多く含まれているため、十分にとることができない。

食物繊維の食物イメージ

薬剤の副作用

リン吸収剤やカリウム値を下げる薬など、便秘を起こしやすい薬を服用している。

薬のイメージ

水分摂取量の制限

十分な水分量を便が吸収できず、硬くなりやすい。

水分摂取量のイメージ

運動不足。自律神経障害

腸管機能が低下している。

運動不足のイメージ
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便秘になりにくい生活を

便秘の治療には下剤(便秘薬)を定期的に服用しますが、日ごろの生活習慣を見直すことで、便秘を予防したり、症状を軽くすることができます。

便秘改善のポイント

朝食後に排便する習慣をつけましょう

朝食後に排便する習慣をつけましょう

起きてすぐに少量の冷たい水を飲みましょう

薬起きてすぐに少量の冷たい水を飲みましょう

朝調理を工夫して食物繊維を多くとり、
カリウムの少ない食事をとりましょう

調理のイメージ

排便時に腹部をマッサージしましょう

腹部マッサージのイメージ

下剤(便秘薬)は必要に応じて処方されます。
医師の指示に従って服用しましょう。

適度な運動を心がけましょう

適度な運動のイメージ
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日常生活で気をつけること

十分な食事

十分な食事のイメージ

十分な睡眠

十分な睡眠のイメージ

適度な運動

適度な運動のイメージ

節煙・節酒

節煙・節酒のイメージ

排便習慣

排便習慣のイメージ